はじめに

教員から民間企業や他業種への転職を考えている皆さん、退職に伴うお金の手続きについて不安を感じていませんか?

「退職金はいつ、いくらもらえるの?」「失業保険は受け取れる?」「年金はどうなる?」「健康保険の切り替えは?」など、教員という安定した職を離れる際には、通常の転職以上に複雑な手続きが待っています。

この記事では、教員から転職する際に知っておくべきお金の知識を、手続きの順番に沿って徹底解説します。損をしないための重要なポイントを押さえて、安心して新しいキャリアに踏み出しましょう。

教員退職のお金で押さえるべき5つのポイント

教員から転職する際、以下の5つが主な金銭的な論点になります。

退職金の受け取りと税金、失業保険(雇用保険)の受給、年金の切り替え(厚生年金→国民年金→厚生年金)、健康保険の切り替え、そして確定申告と住民税の処理です。

これらを正しい順番で、適切に処理することが、数十万円から場合によっては数百万円の差を生むこともあります。

STEP1:退職前の確認事項(退職3ヶ月前から)

転職を決意したら、退職届を出す前に以下を確認しましょう。

退職金の試算

公立学校教員の場合、退職手当は勤続年数と退職理由によって決まります。自己都合退職か定年退職かで支給率が大きく異なるため、都道府県や市区町村の退職手当条例を確認してください。私立学校教員の場合は、学校法人の退職金規程を人事部門に確認しましょう。

一般的に、勤続10年で約200~300万円、20年で約800~1,200万円、30年で約2,000~2,500万円程度が目安ですが、自治体や学校によって大きく異なります。

有給休暇の残日数

教員は有給休暇が取りにくい職場環境であることが多く、未消化の有給が溜まっているケースがよくあります。退職時に未消化分は買い取ってもらえないことが一般的なので、計画的に消化するか、退職日を調整して消化期間を確保しましょう。

共済組合の脱退手続き

公立学校教員は公務員共済、私立学校教員は私学共済に加入しています。脱退時の手続きや、積立金の扱いを事前に確認しておくことが重要です。

STEP2:退職日の設定が超重要

退職日をいつに設定するかで、受け取れるお金が変わります。

月末退職と月末以外退職では、社会保険の扱いが異なります。月末に在籍していれば、その月の社会保険料は現職場が負担しますが、月末の1日前(例:3月30日)に退職すると、翌日から国民健康保険・国民年金に加入する必要があり、自己負担が増える可能性があります。

ボーナス支給日も重要です。夏季・冬季のボーナス支給日在籍が条件の場合、支給日前に退職すると受け取れません。多くの自治体では6月30日、12月10日前後が支給日なので、確認が必要です。

失業保険を受け取る予定がある場合、すぐに次の職が決まっていないなら、失業保険の受給を考慮した退職日設定も検討しましょう。

STEP3:退職金の受け取りと税金対策

退職金の受け取り方法

教員の退職金は通常、退職後1~3ヶ月程度で指定口座に振り込まれます。自治体や学校によって異なるため、事前に確認しましょう。

退職所得控除を理解する

退職金には「退職所得控除」という大きな税制優遇があります。

勤続年数20年以下の場合、40万円×勤続年数(最低80万円)が控除されます。勤続年数20年超の場合、800万円+70万円×(勤続年数-20年)が控除額です。

例えば勤続25年なら、800万円+70万円×5年=1,150万円まで非課税になります。

控除額を超えた部分は、その2分の1が課税対象となるため、通常の所得に比べて大幅に税負担が軽くなります。

退職所得の受給に関する申告書

退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、源泉徴収だけで課税関係が完結します。これを提出しないと、退職金の約20%が一律で源泉徴収され、後で確定申告が必要になるため、必ず提出しましょう。

iDeCoとの兼ね合い

iDeCoに加入している場合、退職金とiDeCoの受け取りタイミングを調整することで、退職所得控除を最大限活用できます。同じ年に受け取ると控除枠を共有することになるため、5年以上間隔を空けるなどの戦略が有効です。

STEP4:失業保険(雇用保険)の受給手続き

教員は失業保険を受け取れるのか?

公立学校の正規教員は公務員のため、雇用保険には加入していません。したがって失業保険は受け取れません。

一方、私立学校の教員は雇用保険に加入しているため、要件を満たせば失業保険を受給できます。また、臨時的任用教員や非常勤講師の場合、雇用保険加入の有無を確認する必要があります。

失業保険の受給要件

離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが基本条件です。自己都合退職の場合、給付制限期間が2ヶ月(2020年10月以降の離職は5年間で2回まで)あり、その後に受給開始となります。

受給額の目安

離職前6ヶ月の平均賃金の約50~80%が基本手当日額となります。給付日数は、自己都合退職で90~150日、会社都合退職で90~330日です。

例えば月給30万円の場合、基本手当日額は約6,000~7,000円、総額で50万円~100万円程度になることが多いでしょう。

ハローワークでの手続き

離職票を持ってハローワークに行き、求職申込と失業保険の申請を行います。4週間に1回、失業認定を受ける必要があり、求職活動の実績が求められます。

再就職手当も活用

失業保険の給付日数を3分の1以上残して再就職した場合、残日数に応じて再就職手当が受け取れます。早く再就職すればするほど得られる手当が増える仕組みなので、積極的に活用しましょう。

STEP5:年金の切り替え手続き

公立学校教員の場合

在職中は厚生年金(共済年金)に加入しています。退職後、次の就職先が決まるまでの空白期間は、国民年金への切り替えが必要です。

退職日の翌日から14日以内に、市区町村役場で国民年金への加入手続きを行いましょう。手続きが遅れても遡って保険料を支払う義務がありますが、早めの手続きが安心です。

私立学校教員の場合

私学共済から脱退し、同様に国民年金への切り替えが必要です。私学共済の脱退一時金がある場合、その手続きも忘れずに行いましょう。

転職先で再び厚生年金に

民間企業に転職した場合、入社日から厚生年金に自動的に加入します。この場合、国民年金からの切り替え手続きは会社が行ってくれます。

国民年金保険料の負担

令和6年度の国民年金保険料は月額16,980円です。収入がない期間でも支払い義務があるため、転職活動が長引く場合は負担となります。ただし、免除・猶予制度もあるので、必要に応じて活用しましょう。

年金の受給額への影響

厚生年金加入期間が短くなることで、将来の年金受給額は減少します。ただし、転職先で再び厚生年金に加入すれば、通算されるため、長期的には大きな影響はありません。

STEP6:健康保険の切り替え

退職後の健康保険には、主に3つの選択肢があります。

1. 任意継続被保険者制度

退職前の健康保険(共済組合)に、最長2年間継続加入できる制度です。保険料は全額自己負担になりますが、扶養家族がいる場合は、国民健康保険より安くなることがあります。退職日の翌日から20日以内に申請する必要があるため、期限に注意が必要です。

2. 国民健康保険

市区町村が運営する健康保険で、退職日の翌日から14日以内に加入手続きが必要です。保険料は前年の所得によって決まるため、教員時代の収入が高かった場合、初年度は高額になる可能性があります。

3. 家族の扶養に入る

配偶者や親の健康保険の扶養に入れる場合があります。年収130万円未満などの条件を満たせば、保険料負担なしで加入できます。

どれを選ぶべきか?

扶養に入れるならそれが最もお得です。扶養に入れない場合、任意継続と国民健康保険の保険料を比較して、安い方を選びましょう。扶養家族が多い場合は任意継続が有利なことが多く、単身の場合は国民健康保険の方が安いケースもあります。

STEP7:確定申告と住民税

年度途中で退職した場合の確定申告

年度途中で退職し、年末時点で再就職していない場合、確定申告が必要です。教員時代に天引きされていた税金が還付される可能性があります。

源泉徴収票、社会保険料の支払証明書、生命保険料控除証明書などを準備して、翌年2月16日~3月15日に確定申告を行いましょう。

再就職した場合

同じ年内に再就職した場合、転職先で年末調整を受けることができます。その際、前職の源泉徴収票を提出する必要があります。

住民税の支払い

住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、退職後も支払いが続きます。在職中は給与天引きですが、退職後は自分で納付する必要があり、一括納付か分割納付かを選べます。転職先が決まっている場合、特別徴収(給与天引き)の継続も可能です。

【実例】損しないお金の手続きスケジュール

ケース:公立中学校教員(勤続12年)が3月末で退職、4月から民間企業に転職

退職3ヶ月前(12月) 退職金の試算、有給休暇の残日数確認、共済組合への問い合わせ

退職1ヶ月前(2月) 退職所得の受給に関する申告書の提出、健康保険の選択肢を比較検討、年金手帳の所在確認

退職日(3月31日) 離職票・源泉徴収票・雇用保険被保険者証などの受け取り、共済組合員証の返却

退職翌日~14日以内(4月1~14日) 該当する場合は国民年金への切り替え(転職先が4月1日入社なら不要)、健康保険の手続き(任意継続または国民健康保険)

退職後1~3ヶ月(4~6月) 退職金の振込確認、住民税の納付書確認と支払い方法の選択

翌年2~3月 必要に応じて確定申告

このケースでは、3月31日退職、4月1日入社なので、年金・健康保険ともに空白期間がなく、スムーズに切り替えができます。

転職×金融リテラシーで人生を豊かに

教員から転職することは、キャリアの大きな転換点です。この機会に、お金に関する知識を深めることで、今後の人生設計がより確かなものになります。

転職を機に見直すべき金融項目

収入が変わることで、NISA・iDeCoの拠出額を見直しましょう。新しい職場の企業型確定拠出年金の有無も確認が必要です。生命保険や医療保険の保障内容が、新しいライフスタイルに合っているかチェックします。また、住宅ローンがある場合、金利の見直しや借り換えの検討も重要です。

転職後の資産形成戦略

教員時代より収入が増えた場合、増えた分を投資に回すことで、資産形成を加速できます。逆に収入が減った場合でも、支出を見直し、無駄を削ることで投資を継続することが大切です。

特に、新NISAの年間投資枠360万円を活用できるかどうかで、10年後、20年後の資産額に大きな差が生まれます。

お金の不安を減らして、キャリアの選択肢を広げる

しっかりとした金融知識と資産があれば、次の転職や独立、起業など、さらなるキャリアチェンジの選択肢が広がります。お金の不安が減ることで、本当にやりたい仕事に挑戦する勇気も生まれるでしょう。

まとめ:損しないための7つのチェックリスト

教員から転職する際、以下の7点を必ず確認してください。

  1. 退職金の金額と受取時期を事前に確認する
  2. 退職所得の受給に関する申告書を必ず提出する
  3. 失業保険の受給資格を確認する(私立教員の場合)
  4. 年金の切り替え手続きを14日以内に行う
  5. 健康保険の3つの選択肢を比較検討する
  6. 住民税の支払い方法を確認する
  7. 必要に応じて確定申告を行う

教員という安定した職を離れることは勇気がいる決断ですが、適切な知識と準備があれば、金銭面での不安は大きく軽減できます。

新しいキャリアへの第一歩を、確かな知識とともに踏み出しましょう。


注意事項

この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に応じた専門的なアドバイスではありません。具体的な手続きや金額は、所属する自治体・学校法人、転職のタイミング、個人の状況によって異なります。重要な決定を行う際は、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。


ABOUT ME
ひと息さん
ひと息さん
7年間教員として子どもたちや保護者と関わる中で、「人生の計画を立てることの大切さ」を感じてきました。先生の仕事、プライベートの充実、節約貯金投資など、頑張りすぎず、でも前向きに。そんな働き方や暮らし方を一緒に考えられる場を目指します。FP3級/メンタルヘルス・マネジメント2種3種/基本情報技術者試験