現代の生徒指導に求められる力―いじめ・ネットトラブルから子どもを守るために

はじめに
スマートフォンの普及により、子どもたちを取り巻く環境は10年前とは大きく様変わりしました。いじめは教室だけでなくSNS上でも起こり、一度拡散された情報は完全に消すことができません。暴言や暴力行為の動画が瞬時に共有され、当事者だけでなく学校全体の信頼を揺るがす事態にもなりかねない時代です。
このような状況の中で、学年主任や担任には何ができるのか。そして、どのようなリスクマネジメントが必要なのか。現場の実践を踏まえながら考えていきます。
1. 今の時代に求められる生徒指導力とは
(1)早期発見・早期対応の感度
いじめやトラブルの兆候は、以前よりも見えにくくなっています。SNS上でのやり取りは大人の目に触れにくく、表面上は何も問題がないように見えても、水面下で深刻な事態が進行していることがあります。
- 生徒の表情やちょっとした変化に気づく観察力
- 休み時間や放課後の人間関係の把握
- 保護者からの相談を受け止める姿勢
これらの感度を研ぎ澄ませることが、第一歩です。
(2)組織対応力
一人で抱え込まず、学年団や管理職と情報共有し、チームで対応する力が不可欠です。特に重大事案では、初動の判断ミスが取り返しのつかない結果を招くこともあります。
(3)デジタルリテラシー
SNSの仕組みや若者文化への理解がなければ、適切な指導はできません。どのようなアプリが流行しているのか、どんなトラブルが起きやすいのかを知ることは、今や教師の必須スキルです。
2. 学年主任・担任ができる具体的な手立て
学年主任として
- 定期的な情報交換の場を設ける: 週1回の学年会で、気になる生徒の情報を共有。「何となく元気がない」といった些細な気づきも大切にする
- 外部機関との連携窓口となる: スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、警察、児童相談所などとの連絡調整役を担う
- 保護者対応の方針を統一する: 担任によって対応がバラバラにならないよう、学年としての基本方針を明確にする
担任として
- 日常的な声かけと観察: 朝の健康観察で表情を見る、給食や掃除の時間に自然な会話をする
- 教育相談やアンケートの活用: 定期的なアンケート実施だけでなく、記述内容から「気になるサイン」を読み取る
- 保護者との信頼関係構築: 何かあったときに相談してもらえる関係を、日頃から築いておく
- ネットリテラシー教育の実施: 情報モラル教育を年間計画に位置づけ、継続的に指導する
3. リスクマネジメントの視点
(1)事案発生時の初動対応
- 事実確認を急ぐ: SNSでの拡散は驚くほど速い。スクリーンショットの保存など、証拠の確保も重要
- 被害者の安全確保を最優先: 登校時の見守り、座席配置の工夫など、物理的・心理的な安全を確保
- 加害者への指導と保護者対応を並行: 加害者にも背景があることを念頭に、教育的配慮を忘れない
(2)情報管理の徹底
- 個人情報の取り扱いには細心の注意を払う
- SNS上での不用意な発言は避ける
- 保護者や生徒への説明内容を学年・学校で統一する
(3)二次被害の防止
- いじめの傍観者への指導も重要。「見て見ぬふり」が加害行為であることを理解させる
- 被害生徒のプライバシーを守りつつ、クラス全体への指導を行う
(4)教師自身のメンタルヘルス
重大事案対応は、教師にも大きな負担がかかります。一人で抱え込まず、同僚や管理職に相談すること、必要に応じて専門家のサポートを受けることも大切です。
4. 予防的な取り組みの重要性
事案が起きてからの対応だけでなく、予防的な取り組みが何より重要です。
- 温かい学級経営: 安心して過ごせる教室づくり、互いを認め合う雰囲気づくり
- ソーシャルスキルトレーニング: コミュニケーション能力や問題解決能力を育てる
- 保護者啓発: 保護者会や学年通信で、家庭でのスマホ利用のルールづくりを呼びかける
おわりに
生徒指導は「問題を起こした生徒を指導する」ことだけではありません。すべての生徒が安心して学校生活を送り、健やかに成長できるよう支援することが本質です。
デジタル時代だからこそ、人と人との信頼関係がより重要になっています。子どもたちの小さなサインを見逃さず、組織として、地域として子どもを守る。そんな生徒指導を、日々実践していきたいものです。








