変形労働時間制って結局どうなった?学校現場への影響をわかりやすく整理

「変形労働時間制が導入されると夏休みに休めるって聞いたけど、結局どうなったの?」
法律はできたはずなのに、自分の学校では何も変わっていない。そう感じている先生も多いのではないでしょうか。
変形労働時間制をめぐる経緯は複雑で、「今どうなっているのか」がわかりにくい状態が続いています。この記事では、制度の中身と現状、そして現場への影響を整理します。
そもそも変形労働時間制とは?
変形労働時間制とは、繁忙期に勤務時間を長くする代わりに、閑散期にまとめて休みを取るという働き方の仕組みです。
教員への適用として想定されているのは「1年単位の変形労働時間制」。文科省が示すイメージはこうです。
文科省のイメージ(例)
学校行事が集中する4月・6月・10月・11月に、1日あたり1〜2時間多く勤務する。その分を8月(夏休み中)にまとめて休日として取得する。
制度上の上限は、繁忙期でも1日10時間・週52時間まで(48時間超は3か月で3回まで)、年間の平均が週40時間以内に収まる範囲での設計が必要です。
法律はいつ成立したの?
2019年12月、当時の給特法改正で「1年単位の変形労働時間制を、地方公共団体の判断により条例で実施できるようにする」規定が盛り込まれました。施行は2021年4月です。
ポイントは「できるようにした」であって、「全国一律で導入した」ではないことです。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2019年12月 | 給特法改正成立(変形労働時間制の条例導入を可能に) |
| 2021年4月 | 施行。ただし導入には各自治体の条例制定が必要 |
| 2021年〜現在 | 条例を制定した自治体は極めて少数。多くの学校では未導入のまま |
「結局どうなった?」正直に言うと…
法律はできたけれど、ほとんどの学校では何も変わっていないのが現状です。
制度を導入するには各都道府県・市町村が条例を制定する必要がありますが、2021年の施行以降、条例を整備して実際に運用している自治体は全国でもごく一部にとどまっています。
理由は明快です。現場からの反対が強く、自治体が動けない状態が続いているからです。
現場が反対する理由
① 繁忙期の定時が「夜7時前後」になりかねない
現在の教員の所定勤務時間は7時間45分(休憩除く)。変形制の導入で繁忙期には最大10時間まで伸ばせるようになります。職員会議や補習が入れば、実質的に夜7時前後が「定時内」になります。
子育て中の先生や介護を抱える先生にとって、この影響は深刻です。「自分だけ除外してほしいとは言い出しにくい」という声は、多くの現場で聞かれます。
② 夏休みに「本当に休める」保証がない
夏休み中も部活動の大会・練習、校内研修、補習、事務作業は実際には続きます。繁忙期に積み上げた「まとめ取り分」を、形式上は休暇にしながら実際には出勤する、という運用になりかねません。
現行でも、土曜授業や振替休日をきちんと消化できていない学校は少なくありません。変形制を導入すれば、より多くの「名目上の休日」が積み上がるだけになる可能性があります。
③ 「長時間労働の付け替え」に過ぎないという指摘
教育研究家の妹尾昌俊氏は「夏休みにまとめて休みやすくする目的はあるが、残業の付け替え的な性格のもので、長時間労働の是正にはつながらない」と指摘しています。
繁忙期の勤務時間が延びることで、学期中1日1日の疲労が蓄積しやすくなります。中央教育審議会の答申自体にも「学期中の勤務が長時間化し、かえって健康に深刻な影響を及ぼすようなことがあっては本末転倒」との釘刺しがあります。
④ 制度導入の前提条件が整っていない
文科省も「業務改善が進んでいることが大前提」と言っています。しかし現状では、月45時間の残業上限を超えている教員が小学校で約8割、中学校で約9割(2016年度調査)という実態があります。業務量が変わらないまま制度だけ導入しても、機能しません。
2025年の給特法改正との関係
2025年6月に成立した改正給特法(教職調整額の引き上げなどを内容とするもの)では、変形労働時間制の扱いは大きく変わっていません。
2019年の「条例で導入できる」という枠組みはそのままで、導入を強制する方向にも、逆に廃止する方向にも動いていません。
つまり現時点では、「使える制度はあるが、使っている自治体・学校はほとんどない」という状況が続いています。
では、この制度はどう見ればいい?
率直に言えば、変形労働時間制は「労働時間の総量を減らす仕組み」ではなく、「時間の配分を変える仕組み」です。月100時間の残業を月50時間にするものではなく、繁忙期・閑散期にどう分散させるかを調整するものです。
だとすると、現場の先生にとって重要なのは次の点です。
- 自分の自治体で条例が整備されているかどうかを確認する
- もし導入が検討された場合、育児・介護中の先生への配慮規定が盛り込まれているかを確認する
- 「夏に休みが取れる」という説明をそのまま受け取らず、実際の運用のルールをきちんと確認する
変形労働時間制の導入自体が問題なのではなく、業務量が変わらないまま制度だけ導入されることが問題です。先生たちの声が、「制度の前に業務を減らせ」という方向に向けられ続けることが大切だと思います。
まとめ
| 内容 | |
|---|---|
| 📋 制度の概要 | 繁忙期に勤務時間を増やし、夏休みにまとめ取りする仕組み |
| 📅 法律の状況 | 2021年4月に施行済み。ただし各自治体の条例制定が必要 |
| 📍 現状 | 条例を整備・運用している自治体は全国でごく少数 |
| ⚠️ 現場の懸念 | 繁忙期の定時延長・夏休みに実際には休めない・業務量は変わらない |
| 🔗 2025年改正との関係 | 今回の給特法改正では変形制の扱いは変わらず |
変形労働時間制は「使える」状態にはなっていますが、「使われている」状態にはほとんどありません。この制度が本当に先生のためになるかどうかは、業務量の削減と運用ルールの透明性にかかっています。








